経尿道的尿路結石砕石術
経尿道的尿路結石砕石術 説 明 書
1.病名及び病状
尿路結石(膀胱結石、尿道結石)
膀胱結石は、排尿後に膀胱に尿が残り、その尿中の結晶が析出することで生じます。他、腎結石が尿管から膀胱まで移動しそこでとどまる場合も膀胱結石と診断されます。小さければ自然に排出されることがあります。長期間、膀胱内に結石がとどまっていると少しずつ大きくなってきます。血尿の原因となったり、膀胱の出口を塞ぐと尿を出せなくなることがあります(尿閉)。結石が出口から尿道に移動し、はさまると尿道結石となります。排尿時の痛みや尿閉のリスクが高まります。
2.治療・検査の必要性,それを受けなかった場合の予後・影響
膀胱結石により血尿が生じたり、膀胱の出口を塞ぐと排尿できなくなります。また、結石による刺激で膀胱に炎症が生じます。年単位で炎症が持続すると発癌(膀胱癌)のリスクが高まると考えられています。また、尿道に移動し、そこでとどまってしまうと尿閉になりやすくなります。膀胱結石、尿道結石ともに通常は溶けない結石です。排出できない場合には、手術治療による結石の摘出が勧められます。
3.推奨する診療行為の内容
1)腰椎麻酔(いわゆる下半身麻酔)もしくは全身麻酔を行います。
2)尿道より径8mm前後の膀胱鏡を挿入します。
3)結石を内視鏡で見ながらレーザーもしくはリソクラスト(小さな削岩器のような器械)で砕きます。ほぼ砂状の結石を除き回収して手術を終えます。手術時間は30分以内が多いですが、結石が大きくなればなるほど時間がかかります。

非常に稀ですが、膀胱内に偶発的に膀胱腫瘍を認めることがあります。腫瘍の多くは悪性のため切除が望ましいため、膀胱腫瘍の手術治療(追加時間10-30分、 合併症は血尿、膀胱損傷など)を結石手術に先立ち行うことがあります。また、状態によっては結石手術を延期することがあります。4.推奨する診療行為の一般的な経過・予定と注意事項入院翌日に手術を行います。術後は麻酔の内容によっては翌日までベッドで安静にして頂きます。手術翌日に尿の管を抜き、歩行や食事が可能となります。その後1、2日、疼痛、血尿や発熱の程度を確認します。もともと排尿しづらい患者さんに膀胱結石や尿道結石がなりやすいため、排尿がうまくできているかどうかも確認し退院となります。
5.推奨する診療行為の期待される効果,実績
結石の除去は通常のサイズであれば難しくはありません。当院での膀胱結石、尿道結石に対する砕石術の砕石率はほぼ100%です。問題は治療後に膀胱結石を繰り返す可能性があることです。膀胱結石ができる原因疾患として、男性であれば前立腺肥大症があげられます。前立腺肥大症の重症度によっては、今回の膀胱結石の手術と同時に前立腺肥大症の手術治療を行うこともあります。結石が大きい場合には、まずは結石の治療を行い、その後、時期をずらして前立腺肥大症の手術を行うこともあります。前立腺肥大症の治療については、前立腺肥大症の手術説明書をご参照ください。文献より治療成績に関する文献においても、ほぼ 100%に近い高い砕石率が期待でき、開腹手術による結石除去術と比較してより安全で、術後合併症が少ないとされています。
参考文献:欧州泌尿器科学会 結石治療ガイドライン 2023 年度版
6.予想される合併症・偶発症・その他の危険性
1)出血
ほとんどの方で血尿を認めます。徐々に血尿は薄くなります。血尿は見た目に派手に見えますが、出血している量は少量であり、輸血や止血の処置が必要になることは極めれ稀です。
2)感染症
術後に尿路に関わる腎臓や前立腺(男性のみ)、精巣上体(男性のみ)に細菌感染を生じる可能性があります。抗生剤を使用するため、重篤になることはまれです。文献による報告では尿路感染を契機に血液中に細菌が広がる状態(菌血症)の発生率は 1.1%です。
参考文献 尿路結石症診療ガイドライン2023年版 第3版
3)膀胱損傷
砕石時に膀胱の粘膜がこすれる程度のものであれば自然に治癒しますが、稀に内視鏡操作により膀胱穿孔が生じる可能性があります。開腹して修復が必要になる場合もありえますが、これも極めて稀です。
4)尿道狭窄
膀胱までに至る尿道が内視鏡操作の影響でこすれるために、術後数カ月してから狭くなることがあります(5%未満)。追加治療が必要なことはまれですが、程度によっては内視鏡で狭い部分を切開したり、尿道形成術が必要になることがあります。
参考文献:Ahyai SA, Gilling P, Kaplan SA, et al. Meta-analysis of Functional Outcomes and Complications Following Transurethral Procedures for Lower Urinary Tract Symptoms Resulting from Benign Prostatic Enlargement.Eur Urol.2010;58(3):384-97.
7.合併症・副作用等が生じた場合の対処方法
手術日から退院までに尿路感染症が生じなくても、術後しばらく経過してから尿路感染症に伴う発熱が生じることがあります。38℃以上の発熱が 2,3 日続く場合には外来予約前でも遠慮せず泌尿器科外来へ連絡のうえ受診してください。再入院し点滴で抗生剤治療をすることもあります。
8.他の治療方法の有無,比較(利害・得失)
①切石術(せっせきじゅつ)
腹部を切開し開腹して結石を摘出する手術です。患者さんが小児の場合や結石が非常に大きい場合には経尿道的手術では負担がかかるため、開腹手術を勧めることがあります。
②体外衝撃波砕石術
尿路結石では体 外 衝 撃 波 による砕 石 術 が知 られていますが、膀 胱 結 石 の場 合 には膀 胱 内 で結 石 が動 き照 準 を合 わせることが難 しい、砕 石 された結 石 が尿 道 につまる可 能 性 があり、原 則 適 応 ではありません。